高力ボルト接合では、製品の受入れ、摩擦面、締付け施工法、マーキング、締付け後の検査をつなげて管理します。トルシア形、高力六角、溶融亜鉛めっき高力ボルトを区別して確認します。

S造・SRC造の現場接合を対象とします。F14Tなどの超高力ボルト、F12Tの溶融亜鉛めっき超高力ボルト、その他特殊な製品・締付け方法は、特記仕様とメーカー仕様書に従います。

1.製品の種類と施工法を確認する

施工要領書の高力ボルト関連部分を確認し、工事監理者の承諾を得ます。締付け方法が設計図書に明記されていない場合は、着手前に協議します。

一般的な高力ボルトの区分
項目トルシア形高力ボルト高力六角ボルト
規格等JSS Ⅱ 09。ボルトセットの大臣認定を確認。JIS B 1186。規格への適合を確認。
セットボルト1・ナット1・座金1ボルト1・ナット1・座金2
等級S10T(F10Tと同じ強度区分)F10T
締付け方法ピンテール破断による締付け設計図書に定めるナット回転法またはトルクコントロール法
受入れ時の確認
項目確認内容
証明書メーカーの規格品証明書・検査成績書を確認する。トルシア形は大臣認定品であることを確認する。
現物未開封の梱包、種類、等級、呼び径、長さ、ロット番号を照合する。
軸力導入試験実施の要否を工事監理者・指定確認検査機関と事前に確認する。
施工法確認実際に受け入れたボルトと締付け機を使用し、代表的な複数接合部で施工して、締付け後検査に合格することを確認する。
締付け長さに加える長さ(mm)
呼び径トルシア形高力六角
M12―25
M162530
M203035
M223540
M244045
M274550
M305055

2.一次締付けと軸力確認の基準をそろえる

一次締付けトルクの目安
呼び径トルク(N・m)
M12約50
M16約100
M20・M22約150
M24約200
M27約300
M30約400
常温における導入張力の平均値の範囲
呼び径平均導入張力(kN)
M1258.5~71.2
M16110~133
M20172~207
M22212~256
M24247~298
M27322~388
M30394~474

高力六角ボルトのトルクコントロール法では、調整した機器で代表ロットの5セットを試験します。平均導入張力が表の範囲に入り、個々の値が平均値の±15%以内であることを確認します。同じ5セットの追締めトルクの平均値を、締付け後検査の基準とします。

3.摩擦面とボルトの保管状態を確認する

摩擦面の確認
時期・項目確認内容
製品検査摩擦面全面のミルスケールが除去され、くぼみが生じていないことを確認する。
孔まわりばり、浮き錆、油、塗料等を除去する。
赤錆面現場搬入時の発錆状態を確認する。薬剤で赤錆を発生させる場合は事前承諾を得る。
ブラスト面赤錆面によらずブラスト処理とする場合は、ショット・グリットブラスト等により50 μm Rz以上の表面粗さを確保し、承諾を得る。
不良箇所母材・スプライスプレートとも処理し、指定の摩擦面状態へ戻す。
保管・持出し・仮ボルト
項目管理する内容
保管等級・サイズ・ロットごとに区分し、雨水・ほこりが付着しない場所で保管する。
持出し当日使用する必要数だけ持ち出し、残りは元の保管場所へ戻す。
仮ボルト本接合用高力ボルトと区別する。高力ボルトを仮ボルトに用いた場合も本接合用へ取り替える。配置はバランスをとる。
再使用一度使用した高力ボルトを再使用しない。
油分油を付着させた仮ボルトを使用しない。摩擦面への油のしみ出しを防ぐ。
SHTB直接風雨にさらされない環境で使用し、温泉施設・温水プール等の腐食環境では使用しない。製品条件を確認する。

4.肌すき・一次締め・マーキング・本締めを順に確認する

締付け手順
手順確認内容
建入れ直し後仮ボルトを締め、母材とスプライスプレートの密着を確認する。1 mmを超える肌すきにはフィラープレートを挿入する。
ボルト挿入仮ボルトを残して空いている孔へ高力ボルトを挿入し、十分な手締め後に一次締めを行う。
仮ボルト交換仮ボルトを本接合用へ取り替え、同様に手締め・一次締めを行う。
マーキング一次締め完了後に、ボルト・ナット・座金・母材の相対回転が分かる印を付ける。
本締めボルト群ごとに接合部中央から周辺へ向かって締め、均等な張力を導入する。
締付け方法ごとの本締めと検査
方法本締め検査・不適合時の対応
トルシア形ピンテールが破断するまで締める。全数で破断・マーキング・共回り・軸回り・余長を確認。各ナット回転量が群の平均回転角の±30°であることを確認する。マーキングなし、異常回転、余長の過不足等は取替え。締め忘れは異常がないことを確認して破断まで締める。
ナット回転法標準回転角120°を基本に、適用する製品・施工要領の条件で締める。全数で締め忘れ・共回り・余長を確認。回転角は標準値の±30°。不足は所定値まで追締めし、過大・共回り・余長異常は取替えとする。
トルクコントロール法毎日の始業時に調整した締付け機を使用する。全数目視で回転量等を確認。著しいばらつきがある群は全ボルトのトルクを確認し、施工法確認で設定した基準の±10%以内とする。不足は追締め、過大や共回り・異常は取替える。

締付け機器は、同じロットから採った5セットを軸力計で試験し、平均導入軸力が標準ボルト張力の±10%以内となるよう調整します。

F10Tの標準ボルト張力
呼び径標準張力(kN)
M1262.6
M16117
M20182
M22226
M24262
M27341
M30417

5.溶融亜鉛めっき高力ボルトは、別の管理条件を確認する

めっき高力ボルトの受入れ・施工管理
項目確認内容
施工管理者・締付け担当者溶融亜鉛めっき高力ボルト技術協会の資格認定を確認する。
受入れボルトセットの大臣認定、荷姿、種類、等級、径、長さ、ロットを確認する。
セット・締付けボルト1・ナット1・座金2。ナット回転法とし、認定された製品の条件に従う。
めっき前後の孔・面めっき前にばり等を確認し、めっき後は孔内面・摩擦面のたれを丁寧に除去する。
摩擦面のブラストスプライスプレートの範囲と周囲約5 mmを含む処理範囲を施工詳細で確認する。
りん酸塩処理設計図書の記載または工事監理者の承諾を確認し、すべり耐力試験で条件を確認する。
摩擦面の不良母材・スプライス双方を修正する。防錆処理は採用した摩擦面仕様と整合させる。
保管・締付け順序区分保管、当日必要数の持出し、肌すきの処置、手締め・一次締め・マーキングを行う。

すべり耐力試験の確認式は、すべり荷重≧1.2×設計ボルト張力×0.4×摩擦面数×ボルト本数とします。

めっき高力ボルトの長さと一次締付け
呼び径締付け長さに加える長さ(mm)一次締付けトルク(N・m、F8T)
M1630約100
M2035約150
M2240約150
M2445約200
M2750約250

記録に残すこと

製品証明書、ロットと使用箇所の対応、軸力・施工法確認の結果、機器調整記録、摩擦面とマーキングの写真、締付け後検査、取替え・追締め・再検査の結果を残します。

本記事は実務学習のための一般的な確認の視点です。個別案件の適否・寸法・検査条件は、適用する設計図書・法令・規準と、担当設計者・工事監理者の確認に基づいて判断してください。

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