鉄骨の品質は、完成品の検査だけで確保するものではありません。製作要領書、工作図、工程ごとの自主検査、受入検査をつなぎ、製品の精度と現場での納まりを確認します。
1.製作着手前に、管理体制と検査条件を決める
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 品質確認の構成 | 鉄骨製作業者による工程ごとの自主検査と、必要な品質・精度を確認する受入検査を組み合わせる。 |
| 工場製作要領書 | 製作開始前に作成し、施工者が内容を検討・確認したうえで工事監理者の承諾を得る。 |
| 工場の品質管理体制 | 建物の構造・仕様を踏まえ、工場の管理者、検査担当者、設備、検査の記録方法を確認する。 |
| 寸法精度 | 適用するJASS 6の鉄骨精度検査基準、鉄骨精度測定指針、仕様書に基づき、工事監理者・施工者・鉄骨製作業者の三者で決める。 |
| 受入検査 | 鉄骨の種別、工場グレード等に応じ、項目・方法・数量・時期・合否基準を決める。 |
| 工事監理者の検査 | 設計図書に検査項目・方法・数量・時期が明記されているか確認し、不明な場合は事前に協議する。 |
| 中間検査 | 製作途上で行う場合は、隠れてしまう部分を含め、項目・方法・数量・合否基準・実施時期を事前に協議する。 |
2.工作図を設計図書と照合する
工作図は、施工者が内容を検討・確認した後、工事監理者へ提出して承諾を得ます。断面寸法だけでなく、通り心・高さ・接合・仕上げとの関係まで確認します。
| 項目 | 照査する内容 |
|---|---|
| 寸法 | 通り心間寸法、軒高、階高、ベースライン、アンカーボルト位置、クレーンレール天端、クレーンスパン、屋根勾配。 |
| 部材断面 | 断面形状・寸法、板厚、材質。 |
| 部材位置 | 通り心と柱心・梁心の関係、フロアラインと梁上端の関係。 |
| 接合部 | スプライス・ガセットの材質と板厚、高力ボルトの種類・等級・呼び径、普通ボルトの種類と径、接合位置、摩擦面・接触面の仕上げ。 |
| 溶接部 | 開先形状・寸法、完全溶込み・すみ肉・部分溶込みの区分、サイズ、非破壊検査の部位と種類。 |
| 内装・外装 | 母屋・胴縁の割付、開口寸法、隅部、間仕切り・区画壁、天井LGS受けの納まり。 |
| その他 | 大架構部材の製作キャンバー、さび止め塗装・溶融亜鉛めっきの範囲、耐火被覆の種類と範囲、現場溶接開先の防錆。 |
運搬・揚重するピースの形状、寸法、重量も確認します。SRC造ではコンクリートの充填性、CFT構造の圧入ではダイアフラムの開口率を照合します。
3.他工種と仮設の取付物を工作図に反映する
| 区分 | 工作図に反映する主な内容 |
|---|---|
| 仮設関係 | エレクションピース、建入れ直し用ピース、親綱用ピース、デッキ受け、水平ネット受け。 |
| 設備関係 | ダクト・配管スリーブ、エレベーター用ファスナー、エスカレーター用ファスナー、電気配線用ファスナー、給排水用ファスナー。 |
| コンクリート・鉄筋関係 | コンクリート止め、シャーコネクター、鉄筋貫通孔、ベースプレートと鉄筋の納まり、アンカーボルトと杭頭鉄筋・柱筋・地中梁主筋の干渉。 |
| 内装・外装関係 | 内外装ファスナー、鉄骨階段、耐火被覆用ピース、止水プレート、胴縁・母屋用ピース。 |
関連項目の施工範囲は契約時に明確にします。冷間成形角形鋼管のコーナー部分は塑性硬化しているため、付属金物をこの部分に溶接しない納まりとします。
| 鉄筋 | 標準とする孔径 |
|---|---|
| 丸鋼 | 鉄筋径+10 |
| D10 | 21 |
| D13 | 24 |
| D16 | 28 |
| D19 | 31 |
| D22 | 35 |
| D25 | 38 |
| D29 | 43 |
| D32 | 46 |
4.自主検査を確認し、受入検査につなげる
製作要領書に記載した自主検査を実施し、検査成績表を確認します。工場での受入検査は原則1回以上を目安とし、節・工区ごとの回数は工事監理者と協議して決めます。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 寸法精度の主要7項目 | 柱の長さ、階高、仕口部の長さ、柱のせい、仕口部のせい、梁の長さ、梁のせい。 |
| その他の精度 | 曲がり、ねじれ、ブレースの角度等。 |
| 累積誤差 | 単品が許容範囲内でも、スパン・階高全長の累積誤差図と仕口の相対誤差表を確認し、建方計画へ反映する。 |
| 溶接部 | 自主検査と受入検査の結果、補修履歴、必要な非破壊検査の結果を確認する。 |
| 高力ボルト接合部 | 摩擦面処理、ボルトピッチ、はしあき等を確認する。 |
| 孔・仮設ピース | 鉄筋貫通孔、取付位置、溶接、取付忘れを確認する。 |
| 開先防錆 | 現場溶接部への防錆剤の塗布を確認し、塗布量はメーカー仕様書による。 |
5.塗装してはいけない部分を確認する
| 対象 | 確認事項 |
|---|---|
| コンクリートに密着・埋込みとなる部分 | 塗装除外範囲を工作図と照合する。 |
| 組立てで肌合わせになる部分 | 接触面に塗膜を介在させない。 |
| 高力ボルト摩擦接合面 | 摩擦面の指定処理と塗装範囲を一致させる。 |
| 密着・回転のため削り仕上げした部分 | 仕上げ面を塗装で覆わない。 |
| 現場溶接・超音波探傷検査の範囲 | 溶接線の両側それぞれ100 mm以上、かつ7t以上を確認する。tは板厚。 |
記録に残すこと
承諾済み製作要領書・工作図、自主検査成績表、受入検査記録、累積誤差図、補修・再検査記録、塗装除外範囲と現場接合部の写真を保存します。
本記事は実務学習のための一般的な確認の視点です。個別案件の適否・寸法・検査条件は、適用する設計図書・法令・規準と、担当設計者・工事監理者の確認に基づいて判断してください。