溶接部は、完成後の外観だけでは確認できない条件があります。溶接技能者の資格、開先・裏当て金、天候、予熱、溶材の保管、入熱・パス間温度を記録し、外観検査と超音波探傷検査につなげます。
S造・SRC造の溶接接合部を対象とし、工場製作を中心に現場溶接に関する確認も併記します。複雑な構造、高層・高精度の架構、特殊な溶接法は特記仕様に従います。
1.製作要領と資格を着手前に確認する
着手前の確認| 項目 | 確認内容 |
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| 製作・施工要領書 | 工場製作要領書と現場施工要領書の溶接関連部分を検討し、工事監理者の承諾を得る。 |
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| 検査体制 | 製作業者の自主検査と施工者の受入検査を区別し、必要な立会いを決める。 |
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| 寸法精度 | JASS 6の鉄骨精度検査基準、鉄骨精度測定指針、仕様書に基づき、三者で合意する。 |
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| 入熱・パス間温度 | 指定値と管理方法を確認する。記載がない場合は工事監理者と打ち合わせる。 |
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| 非破壊検査 | 完全溶込み溶接部の検査方法・範囲・抜取率を確認する。 |
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| 接合部の特記 | 建設省告示第1464号に関する設計図書の特記を確認し、不明点は事前に協議する。 |
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溶接を担当する人の確認| 区分 | 確認する資格・条件 |
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| 溶接管理技術者 | WES 8103の2級以上を定める。 |
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| 工場の溶接技能者 | 溶接工法に応じた技量資格を確認する。資格証明書の写しを提出し、承諾を得る。 |
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| 現場の溶接技能者 | 特記がない場合はAW検定の現場溶接技量検定合格者とする。同様の試験合格を証明できる場合は工事監理者の承諾を得る。 |
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| 本人・有効期限 | 資格証明書の写真と本人が一致し、有効期限内であることを確認する。 |
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| 技量に疑問がある場合 | 欠陥が多い場合等は工事監理者と協議して技量確認試験を行い、必要に応じて担当者を交替する。 |
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2.天候と予熱を確認する
作業環境の管理| 条件 | 対応 |
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| 気温が-5℃未満 | 溶接を行わない。 |
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| 気温が-5~5℃ | 溶接線の両側100 mmの母材を適切に加熱して施工する。 |
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| 降雨・降雪 | 溶接を行わない。 |
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| 被覆アーク溶接の風 | 10 m/s以上を防風措置が必要となる目安とする。 |
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| ガスシールドアーク半自動溶接の風 | 2 m/s以上を防風措置が必要となる目安とする。 |
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3.組立て溶接・裏当て金・エンドタブを確認する
組立て溶接の最小ビード長さ| 厚い側の板厚t | 最小長さ |
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| t≦6 mm | 30 mm |
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| t>6 mm | 40 mm |
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組立てと開先の確認| 項目 | 管理する内容 |
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| 組立て溶接位置 | 梁フランジ両端から5~10 mm以内、ウェブフィレットのR止まりまたはすみ肉溶接止端から5~10 mm以内の位置を避ける。 |
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| 現場の裏当て金 | エンドタブ部分での組立て溶接を基本とする。承諾を得て開先内で行う場合は、本溶接と同じ溶材を用いる。 |
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| 溶接法・溶材 | 被覆アークまたはガスシールドアーク溶接とし、被覆アークでは低水素系溶接棒を原則とする。 |
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| 裏当て金のすみ肉溶接 | 梁フランジ側のアンダーカットに注意する。 |
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| 内外装ファスナー等 | 原則として工場溶接とする。 |
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| ルート間隔 | 裏当て金を用いる場合は最小5 mmとする。 |
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| エンドタブ | 完全溶込み・部分溶込み溶接の始端・終端に取り付ける。鋼製エンドタブは裏当て金へ取り付け、母材に直接組立て溶接しない。 |
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| エンドタブの処理 | 切断の特記を確認する。特記がなく、現場施工に支障がなければそのままとする扱いを確認する。 |
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| 代替・固形エンドタブ | 技量付加試験で確認した技能者またはAW検定有資格者とし、固形エンドタブは工事監理者が承認したものを用いる。 |
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4.溶接棒の乾燥と施工記録を管理する
溶接棒の標準的な乾燥条件| 区分 | 被覆剤 | 温度 | 時間 |
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| 軟鋼用 | 非低水素系 | 70~100℃ | 30~60分 |
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| 軟鋼用 | 低水素系 | 300~350℃ | 30~60分 |
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| 高張力鋼用 | 非低水素系 | 70~100℃ | 30~60分 |
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| 高張力鋼用 | 低水素系 | 300~350℃ | 60分 |
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溶接棒は使用直前に乾燥状態を確認します。許容放置時間の目安は低水素系で3~4時間、非低水素系で6~8時間です。温湿度や製品条件を確認し、超えたものは所定条件で再乾燥します。
完全溶込み溶接では入熱・パス間温度の管理結果を確認します。現場では溶接箇所付近に技能者名・施工日時・パス数を表示し、開先条件、溶接条件、気象条件、積層図を含めた記録を残します。
5.溶接前後の自主検査を確認する
工場・現場の検査項目| 段階 | 工場 | 現場 |
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| 溶接前 | 肌すき、食違い、開先角度、ルート間隔、エンドタブ・裏当て金の取付け、開先内の清掃。 | 食違い、開先角度、ルート間隔、エンドタブ・裏当て金の取付け、開先内の清掃。 |
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| 溶接後 | ビード形状、クレータ処理、脚長不揃い、まわし溶接、のど厚、余盛、ビード幅、溶接長、割れ、アンダーカット、オーバーラップ、ピット、曲がり・ねじれ、エンドタブ処理、スパッタ除去。 | ビード形状、クレータ処理、脚長不揃い、余盛、ビード幅、割れ、アンダーカット、オーバーラップ、ピット、エンドタブ処理、スパッタ除去。 |
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食違い・アンダーカットの確認| 項目 | 確認する条件 |
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| 突合せ継手の食違いe | t≦15 mmではe≦1.5 mm。t>15 mmではe≦t/10、かつ3 mm以下。tは薄い側の板厚。 |
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| 通しダイアフラムと梁フランジ | 梁フランジの溶接部がダイアフラムの厚さの内部で溶接される納まりを確認する。 |
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| 仕口のずれ | ダイアフラム・柱スキンプレートと梁フランジの板厚関係で条件が変わるため、適用する精度基準と断面詳細を照合する。 |
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| アンダーカット | 深さ0.3 mm以下。ただし長さの総和が溶接全長の10%以下で、断面が鋭角的でない場合は1 mm以下とする条件を確認する。 |
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6.不適合部は補修と再検査を一組で扱う
補修前に原因と施工方法を見直し、工事監理者・設計者と方法を協議します。補修した位置が分かる記録を作成し、受入検査では自主検査で補修した部分を重点的に確認します。
溶接欠陥と補修の考え方| 欠陥 | 補修内容 |
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| 脚長過大 | 極端に過大な場合はグラインダー等で仕上げる。 |
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| 脚長不足 | 所定脚長となるよう、4 mm以下の溶接棒で再溶接する。 |
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| 余盛過大・オーバーラップ・ビード外観の不揃い | グラインダー等で仕上げる。 |
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| ブローホール・ピット・スラグ巻込み・溶込み不足・融合不良 | ガウジングまたはグラインダー等で除去し、再溶接する。 |
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| アンダーカットの補修 | 深さが0.05t以下かつ1.0 mm以下の場合はグラインダーで除去し滑らかに仕上げる。いずれかを超える場合は除去後に再溶接する。前節の許容条件との関係を確認し、補修範囲を協議する。 |
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| 溶接部の割れ | 割れの両端から50 mm以上延長した範囲までガウジングで除去し、再溶接する。 |
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| 母材の割れ | 工事監理者・設計者と協議し、母材交換等を決める。 |
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| 食違い・仕口のずれ | 適用する検査・補強マニュアル等に基づき、補強方法について承諾を得る。 |
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7.超音波探傷検査の範囲と抜取りを確認する
超音波探傷検査の実施条件| 項目 | 確認内容 |
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| 検査会社 | 受入検査は施工者が直接契約した検査会社で行う。検査要領書を作成し、内容を確認する。 |
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| 検査員 | UTレベル2または3に加え、建築鉄骨超音波検査技術者の資格を確認する。 |
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| 対象と判定 | 完全溶込み溶接部を対象とし、適用する「鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説」による。 |
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| 検査箇所の数え方 | 1溶接箇所を1検査箇所とする。長さが300 mmを超える場合は300 mmごとに区切り、端数150 mm以上は1箇所、150 mm未満は隣接部分へ加える。 |
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| 抜取率 | 設計図書に従う。記載がない場合は工場グレード、架構形式、溶接難易度を考慮し、工事監理者の承諾を得る。 |
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記録に残すこと
資格証、承諾済み要領書、気象・予熱・溶材乾燥・入熱・パス間温度の記録、開先検査、外観検査、超音波探傷検査、補修位置図と再検査結果を対応させて保存します。